浪費家の幸福−私信ミス・リリカ・トダ宛−
リリカへ。元気か。白々しいと思うかもしれないが、俺は少し元気じゃない。相変わらずマドリッドでニューヨークやトーキョーからの仕事を受けて暮らしているが、リリカの根源からのパワーを受けて自分からみなぎるような活力を感じていたころに比べると、バーレスクを見てもストリップを見ても内側になにも生まれてこない。プエルトリカンのバンドを見ても。ハンブルグでトランスを聴いても、だ。リリカの与えるエナジーは、仕事も遊びも極端だった。リリカの写真が2枚ある。リリカは馬をあやすのが巧みで、乗馬の写真が残っている。それから大きな帽子をかぶったトップレスのリリカ。クルーザーの上だ。
今思うと、リリカはいつもなにかを踏みつけにしている。人のプライドであるとか、俺のプライオリティであるとか、クルーザーのステップや鐙、マンダリンオリエンタルのエントランス、それらは常にリリカにひれ伏していた。生まれながらに帝王学を学んだかのようだった。金はあの頃の5倍に増えた。逢いたい。ただ逢わないほうがいいのはわかっている。リリカのエナジーは身体に毒だ。
どんな酒よりも、長く引いたホワイトラインより、混沌とさせる。リリカがそばにいると仕事も順調、金も貯まる、女神かなにかのように全部がラッキーだった。セリナをそばに置いている幸福も含めるとそれは宇宙を凌駕した。今はリリカが居ない分だけ金が増えた。それだけのことだ。この前はリリカの愛した馬に会いに行った。その前はリリカと行った雪山に猟に行った。ウサギをたくさん仕留めたよ。まるで無駄に殺した。ウサギの血の匂いはリリカの体臭に似ていたから執着したんだ。なんどもカスカスになるまでオナニーしたみたいな気分だ。虚しいよ。皆既日食レイブではDJしたし、マヤ遺跡の夜景を遠くに眺めながらぐるぐると現地の女たちと踊った。世界中でリリカを想っている。
金があるだけにリリカを自分のものにしたくてたまらない。それがかなわないからリリカなのだと理解しているのだが、リリカを傍に置くステイタスこそが幸福なんだ。